コシヒカリBLについて

  農家利兵衛の魚沼産コシヒカリへ戻るホーム (2008/11/06記)
 ● プロローグ
 コシヒカリの弱点は

  1.多収穫は望めない
  2.棹(背丈)が長く倒伏しやすい
  3.病気に弱い

 肥料を多く施し、多収量を目指すと、背丈が長く、穂が大きく重くなり、耐え切れずに倒れてしまいます。また倒伏しなくても食味が低下してしまいます。したがって、もともと利兵衛では食味第一に考えていますので、1と2の弱点は問題ではありません。でも3の病気(イモチ病)に罹ると、場合によっては全滅する場合さえあります。

 イモチ病とはカビの一種です。生育途中には葉に斑点が現れます(葉イモチ)。この時点では、まだ対処可能ですが、穂が出る頃、穂の付根のあたりに発生(穂イモチと呼びます)すると、穂に水が供給されなくり、穂全体が枯れてしまいます。全滅です。 さらに、困ったことに、一度罹ってしまうと、元には戻りません。雨が多く、温度と湿度が高い時には要注意です。イモチ病の兆候がないか、常に稲を観察し、雨の晴れ間を狙って予防のための農薬散布しなければなりません。(*:全ての田で防除が必要というわけではありません)

 平成15年頃から、イモチ病に強い、そんな品種ができるとのうわさがあり、私も心待ちにして待っていました。そして平成17年。待望の解禁(種もみの一般配布)です。話では食味も問題ないということでしたが、魚沼の私のような特殊な味の場所でも大丈夫なのか、一抹の不安を抱きながらの切り替えでした。

  確かに強い。 イモチ病の気配もありません! 結局イモチ病の防除は一度もせずに済みました。精神的にも体力的にも大助かりです。さあ収穫(稲刈)。。。。。 あれ??  変??


 
 ● こしひかりBLの正体
  まずはこちらをご覧ください。新潟県のページです。

 上記新潟県のページを読んでもよくわからないので、BL米の要点をまとめてみました。
  
  目的
   その1. イモチ病耐性を持たせる。(農薬減ただし無農薬ではない)
   その2. DNA鑑定で、新潟県産以外の米と判別できるようにする(偽米対策)。
         (県内生産地域まで限定できる)

  BLとは
   1.限りなくコシヒカリに近いがコシヒカリではない。
   2.単独の品種ではない。
   3.遺伝子組替えではない。
   4.ハイブリット(一代交配)米ではない。
   5.新潟県では現在4種類ある。2種類追加予定。
   6.年によって農家に配られる種及び配合が変わる。

 と、整理しても、ますます、訳が解らなくなります。最初はただ単に 「イモチ病に強い固体を選別しているのだろう」くらいにしか考えていませんでしたが、こんなにも面倒くさいことをやっているとは驚きです。


 ● 食味は ?
  新潟県の食味調査(魚沼産ではありません)ではBLと昔のコシヒカリでは「ほぼ同様」としています。でも本当でしょうか?一般消費者ではむしろBLの方がおいしいという結果になっていますし、逆に業者では標準(従来のコシヒカリの方がおいしいという風に読み取れます。

  では魚沼では実際にどうだったのでしょうか。以下の表は県の調査(平成14-15)以降、当地域での結果です。

  
年度 食味 備考
従来種コシヒカリ コシヒカリBL
17年度産 胴白(中心部が白濁)米多い。甘味低
18年度産 一般消費者には、詳細に比較しないと差異はあまり感じられず
19年度産 甘味・香り・ねばり低
20年度産 ○/△ 稲の背丈が伸び(BL)倒伏多し。豊作
21年度産 ○/△ 21年産とほぼ同じ

   
*: 全新潟産ではなく、私の田及び近所の農家の田での結果です
△は味が悪いでということではないが、一般消費者でも差が分かります。
○は味自体は特別悪いということではないが、本来の魚沼産コシヒカリの特徴は出ていない。
 昔の味を知る人。経験のある人は判ります。
◎は魚沼産(当地での)本来の味香りなどの性質が出ています。

17年度は、従来種を作っている人がいませんでしたので、空欄にしてあります。
17年度の、胴白米については、農協では、「天候が原因」と説明しています。
17年度の、胴白米はこの地域(南魚沼)だけの発生でした。
18年度は、この地域以外一部地域で胴白米が発生しました。
19年度は、新潟県全域から同じような感想が聞こえてきました。
20・21年度は、場所によって差があるようです。


  単純に、統計学だけのサンプル調査理論からいえば、個々の数字自体は間違っていないのかもしれません。ただし、食味などのあいまいなものを、炊き方やその他水質等の諸条件を定義せず、一回の調査だけで済ましてしまっています。少なくとも10くらいの条件パラメーターは必要なはずです。科学的とはとても言えないでしょう。

  肝心なのは、まず、試食する人の特性です。味に敏感な人もいれば、鈍感な人もいます。経験のあるなし(いろいろな米を食べている)も大きな条件になります。魚沼米の味を知っている人とそうでない人で比べたら、当然結果は違ってきます。業者の調査結果と一般消費者の結果が逆さまなのが、まさに、その現れなはずなのですが、「結論先にありき」なのでしょうか。

  まず、生産者であり、一番大切な農家の調査がありません。米小売店や料理店、調理師の調査を考えなかったのでしょうか。少なくとも民間の調査機関に委託して、第三者の立場でしっかりと実行してもらいたいものです。

 ● 表示について
 現在、新潟県産の米に、BLという表示はありません。流通においても、消費者用パッケージにも一切の表示はありません。「コシヒカリBLは品種ではない」というのがその根拠だと思います。農林省の許可を得ているそうです。

 今年、詳細を知らない新潟県知事が、この表示に関して、疑問を呈しました。ところが、県経済連(農協)や流通業界から猛反発を受けました。純粋に消費者の立場から考えれば、この知事の発言は全く自然なのでしょうが、そうはなりませんでした。国が率先して食品偽装表示していると言われてもしょうがありません。

 もし、本当にBL米の方が全てに優れているのであれば、堂々と表示できるはずです。消費者にアピールする努力をすればいいはずです。ところが一番反対しているのは中身をよく分かっている流通業者です。つまり、BL米では売れないのです。 減農薬と表示もできないし、残念ながら、味も落ちると認識しているのでしょう。

 *: 以前他県で同様なBL米を別ブランドとして売出したことがそうです。結果は散々。
    別ブランドでは失敗することを知っていたのかもしれません。確信犯です。 

 *:首都圏で「オリジナルコシヒカリ」「進化したコシヒカリ」のキャチフレーズで試験キャンペーン
   をするというTVニュースがありました。ネーミングのおかしさもさることながら、
   もう姑息なことは止めた方がよいと思います。

 ● 問題点
1.食味
 BL米の味が悪いというよりは、年によって食味の差が大きいことが大問題です。
天候の影響もあるが、主要因は遺伝子の違う種及び混合比率が毎年変わるというところからきている。(耐性イモチ病菌の出現を防止するために、そうせざるを得ない) 交配した稲の他の遺伝特性が隔世遺伝します。
2.減農薬
 BL米で、確かに農薬は少なくなるが、無農薬にはならない。除草剤は依然として必要であり、害虫駆除も残り、それで減農薬と言える(アピールできる)のか疑問である。土地気候によっては、もともとイモチ病とは無縁な場所もあります。つまり、全然減農薬にはなっていないのです。
3.DNA鑑定
 新潟県産(BL)コシヒカリは、遺伝子が異なるため、他地域の通常コシヒカリとDNA鑑定で区別できます。また県内でも、地域により、年度により、違う種を使用し、詳細に判別できるようになっています(県としては、これが一番の目的ではないかと思っています)。でも、それがいったいどれだけ意味があるのでしょうか。BL米コシヒカリが全て優れているのであれば、他の県でも競ってBL米に変更するはずですが、現実はそうなっていません。つまり、BLは市場で人気がないということです。これでは、偽米対策にも、意味をなさないし、DNA検査を依頼する人も出てこないでしょう。逆にプランドであったはずの新潟県産がブランドでなくなることを意味します。本末転倒です。魚沼産はもっと深刻です。

  *:平成23年までにDNA鑑定でニセ魚沼産コシヒカリの告発された話は
    一度も聞いていません
4.栽培方法
 BLはコシヒカリではありません。つまり稲の生育特性も微妙に違います。平成20年度の場合、背丈も伸び、穂丈も伸び、登実に時間がかかり、穂重もかかり、例年どおりの肥料を与えた稲は、ほとんど倒伏してしまいました。
これでは生産者は何を頼りに育ててよいか分かりません。経験が生かされないのです。県や農協からは、不思議なことに、種の特性の情報はありません。(と言いますか、情報を出したら、DNA鑑定ができなくなってしまいます。これも本末転倒です。) 毎年違う。こんな稲を誰のために育てなければならないのでしょうか。
5.出荷
 現在、農協への出荷はBL米に限られています。従来のコシヒカリを作ったとしても、自分で売り先を確保できなければ、どうしようもありません。したがって、一般の農家は必然的に県の方針に従う以外に選択がないのが現状です。
 本来ならば、BL米を作るか作らないかのは、農家が決めるのが理想でしょう。最終的には、消費者が選択すべきものだと思います。しかしながら、保管倉庫や施設事務管理費等の問題もあり、実現的には難しいのです。上記DNA鑑定による偽米対策ができなくなるという理由もあります。
 ● 利兵衛の決断
利兵衛は悩みました。

 イモチ病に強い。そのこと自体は非常に魅力的です。ですが、最初から非常に不満でした。明らかに味が変わっていました。後で調べたら当たり前だったのです。別な種類ではないけれど、遺伝子が違っているのですから、同じになるわけがありません。怒って次の年からすぐに元に戻した農家も出てきました。
 利兵衛の場合、もう一年様子を見てみよう。苗(種)の入手が難しいということもありました。そして18年。その年は味はまったく問題ありませんでした。さて、また困りました。このままBLを続けていいのかもしれない。
 でも不安は残ります。たまたま18年は良かったけれど、BLの種はまた変わります。必ず同じ味が出るという保証はありません。 そこで、19年、決めました。昔のコシヒカリに戻します。

 大正解! この年はBL米の場合、むしろ古米の方がおいしいと感じられるくらいです。せっかくの魚沼産の特徴が出ていませんでした。この現象は魚沼だけではないらしく、今度は新潟県全体から聞こえてきました。
 心配していたイモチ病についても、肩透かしをくらったように、何の問題もありませんでした。
BL米を作ったことにより、菌そのものが消滅したのかもしれません。利兵衛にとってはBLのメリットは何もなくなってしまいました。
 ● 今後は並列生産へ努力を
 平成20年。 また昔のコシヒカリに戻す農家が増えました。ただし、農協へは出荷できませんので、自家用に食べたり、親戚に配る分だけになります。市場には昔の魚沼産はほとんど出回らないことには変わりありません。

 ただし、従来種のコシヒカリにも多少問題はあります。種の維持の問題です。新潟県では作りませんので、個人レベルの維持は難しくなります。場合によっては他県から仕入れなければならなくなるかもしれません。これからもまだまだ悩みは消えたわけではありません。BL米も種子選別などにより、もっと安定する可能性もあります。
新潟県は「見切り発車」であったと言えるでしょう。振り回されているのは結局、農家です。

 本来であれば、生産者が種子を選択し、そして市場(消費者)が決めるべきものです。
BL米自体の開発が悪いのではなく、この大原則を忘れてしまったことが大問題なのです。


 現実として、並列生産。これを実現するためには数々の問題点がありますが、それらを解決・克服することに努力をしてほしいものです。そしてその結果。消費者に受けいれられないものは、その時に、県が決めるのではなく、もちろん生産者自身が決断すべきです。ほかの食料品と違い、BL米の場合、どちらかは自然と消滅することになるでしょうが。

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